美しく幻想的。恒川光太郎『夜市』 は”隣接した異界モノ好き”なら絶対読むべきホラー!

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。

大好物な異界感を存分に味わえる。

※この記事は以前のブログから改稿して転載してものです。

日本独自の伝承や、土俗的・土着信仰ぽいモノ、ふとした隣にある異界、みたいな世界観がすごく好きです。
そういった作品に会えると本当に嬉しくなり、裏設定だとかをアレコレ調べて自分でフムフム納得する作業が至福な時間。

小説だけでなく、アニメやゲームのそういった設定にも興味津々なので、友人には「設定厨」と呼ばれる始末。見たこと・やったことのない作品を設定から知ることも。

暗い?ああ暗いさ。

なんとでもいうといいさ。

巻末の解説にありますが、

”「草葉の陰」に「あの世」を幻視する日本的な異界感”
”此岸と彼岸が地続きであるかのような異界往復”

まさにこの感覚が大好物なんです。
この、大好物な異界感を存分に味わえるのが「夜市」。

表題作の『夜市』。

小さな頃連れていってもらった、夜のお祭りの風景。

明暗のきつい提灯の灯かり、出店で売られている普段は見ないおもちゃや食べ物。店先に並ぶお面や風鈴。人のざわめき、聞こえてくる祭囃子。

そんななつかしいはずの夜市の風景ですが、本作の夜市は通常の風景とどこかが、なにかが違う。

なつかしくも、うっすらひんやりした怖さが存分に味わえます。

カバーも美しくていいよね・・・  本当に本のカバーとっても大事だと思う。
帯はずしてみました。

イイ(・∀・) !

同時収録・「風の古道」

日常の中にある、けれど誰も見つけられない「道」。

そこは人ならざるものが闊歩する異界の道なのですが、そこにフと迷い込み・・・というお話です。

2作品とも「異界」に迷い込む話ですが、その迷い込みかたも「よーしこれから異界にいくぞー」ではなく、いたって普通にそこに踏み入れてしまいます。

踏み入れた場所が「ちょっとおかしいところ」である、という、はっきりとした説明もなく、気が付くとありえないモノ達がうごめいているさまが、これまでの普通の光景のようにあたりまえのように書かれていくため、読み進めていくうちに「あれ・・・ここ何?」とジワジワきます。

角川ホラー文庫、かつ、ホラー大賞受賞作のため、超絶こわい話やスリル満点な話を想像しがちですが、2作品とも少し違います。

淡々とした文章から、色や空気、夜の暗さ、ありえないモノたちの息遣いがいきいきと浮かんできます。美しく、懐かしく、日本的で幻想的なホラーです。

もー大好き。こういうの。

アニメだと「千と千尋」ぽくもありますが、私はうる星やつらの「ビューティフルドリーマー」を思い出しました。

小さい頃に初めて観たので、当時はストーリーもなにもわからずに観ていたのですが、いつもの世界に異界が隣接していて、それがなにかのきっかけにつながる時がある。
つながった時の少しの違和感に気づきながらも、いつのまにか2つの世界の境界をまたいでしまったことに対してどうすることもできない・・・。
この「異界感」にものすごく魅かれました。

異界モノについて熱く語るとまた「設定厨」て呼ばれるので、誰か私と異界について語ってください(泣)


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