映像化はムリ。読書の醍醐味が味わえる、貴志祐介『天使の囀り』のおぞましさと哀しさに戦慄する

北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。
恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように、自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。
アマゾンで、いったい何が起きたのか?高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか?

前人未到の恐怖が、あなたを襲う。

早く先が知りたい・・・でも読み終わるのがもったいない・・・。

※この記事は以前のブログから改稿して転載してものです。

本を読んでいる時、こんな気持ちになってページをめくる手が早くなる。

読み終えた達成感と、終わってしまった、という少しの残念な気持ちで、パラパラともう一度目を通してみる。

こんな読書体験ができる時があるから、読書はやめられませーーーん ヾ(´ω`=´ω`)ノ

「天使の囀り」は、まさしくそんな本。

初めて読んだときは、先が気になって気になって、一気に読んでしまいました。

今だから言うけど、仕事さぼって読んだりしてた。いや、さぼってはいない。

続きを読むのに喫茶店に入る時間を作るため、打ち合わせでの外出時にちょっと早く出たりしてた。さぼってない(2回目)。

貴志祐介さんの著作の中で、個人的にランキング1~2位を争う本です。

まず、表紙のすばらしさ。

現在発売されている文庫の表紙は変わっていますが、私はウィリアム・アドルフ・ブクロー氏の絵の表紙が好き。


William-Adolphe Bouguereau (1825-1905) – Youth (1893)

ギリシア風の衣装をまとった女性に天使がじゃれついて、女性は笑いながら耳を押さえています。

で、中央にタイトルの「天使の囀り」。

本当にナニカ聞こえてきそうだし。女性は聞き耳をたてているのかもしれないし、逆にうるさくて耳を押さえてるのかもしれない。
天使のヤケにハンパな大きさとムチムチの肉感もあいまって、女性の笑顔もなんだかこわく見えてくる・・・。
本作の世界観を実に絶妙に、不気味に表していると思います!

大好きな本のため何回も読んでいて、勢いでペラペラとネタバレしそうになるため詳しく書きませんが、

怖い!(/TДT)/
グロい! (;´Д`)
おぞましい! (‘A`)
ワアアーー!(゚Д゚≡゚Д゚) やめてくれーーーーー!

の連続なのに、どぉーーしても早く先を知りたくなるんです。ページをめくる手がとまらない。

度々、クライマックス並の盛り上がりをみせるのに、あれ、後ろにページがたんまり残ってる。
え、ここまでわかったのに、まだまだページが残ってるの・・・?

どうなっちゃうんだよう!これ、どうなっちゃうんだよう!

と、残ったページの厚みで不安をあおられます。

思い知らされる、活字の威力。

この本の醍醐味は、「予想もしなかったどんでん返し」ではなく、読んでいると、少し先に起こるであろう事の大枠や、出来事の原因について、「ある程度予想がつく」ところかと思っています。

押すなよ?絶対押すなよ? みたいな・・・。

でも、読まずにはいられない。

ウアーー知ってたけどさ!ちょっと前からわかってたけどさ!という絶妙なバランスが本当にすごいです。

これって計算されてるのかな?だとしたら貴志祐介さんの策略にまんまとはまってますよね。アアアこれはとても映像化できん・・・・というアレな描写もあり、活字の威力をいやでも突きつけられます。

1つ1つ謎を解明していく工程と共に、 おそらくは膨大な取材と検証を行ったであろう専門用語が多数でてきますが、まったく苦にならず、しかもそれによって、物語が空想ではなくリアルなもののような気がしてくるんです。

医者だったらこういう見解をするものなのかな?研究者だったらこういう意見になるのかな?というかんじ。

できれば、そのあたりも軽く流さないで、記憶のスミに置きながら読み進めてみてください。あとで絶対確かめにそのページに戻ってくるはず・・・!

最初から最後まで、貴志ワールドにどっぷり浸かって一気読みのパターン。
そりゃあ仕事早く切り上げて喫茶店いきますわ。さぼってないけど(3回目)。

確かに超こわい。でもどこか、哀しく、美しい。

人間の持つ恐怖や快楽という感情、生と死、そしてすべての生物の使命である繁殖、という極めて根源的なモノに、様々な人物の口と思考を借りて、様々な角度から触れていくからでしょうか?
人の矜持てなんだろう、人の尊厳てなんだろう、何を失うことが、人ではないことになるんだろう。物語終盤になると、そんな考えがよぎります。

すべてのホラー好きに、いや、ホラーが好きじゃない人も読んでほしい!と切に思いマス!※ちなみに幽霊モノじゃないです

本当に読み終えるのが残念で、次にこんな本に出合えるのはいつだろう・・・というちょっとさみしい気持ちで読み終わりました。

でもね。でもね!たったひとつだけ!

ひとつだけ、ささいな違和感を感じた部分があります。
ネタバレじゃないので安心してくださいませ。

除光液は普通持ち歩いてNEEEEEEE

て。ちょっと思っちゃった (笑)

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