高尾で発見された手足と顔がない死体は、十年前ストーカー・リカに拉致された本間だった。警察官を殺し、雲隠れしていたリカを追い続けてきたコールドケース捜査班の尚美は、同僚の孝子と捜査に加わる。捜査が難航する中、孝子の恋人、捜査一課の奥山の連絡が途絶えた。彼の自宅に向かった二人が発見したのは…。『リカ』を超える衝撃の結末。
10年の沈黙を破り、あのハイパーストーカー・リカがかえってきた!
※この記事は以前のブログから改稿して転載してものです。
あなたは、大好きな彼から拒絶されても笑顔で接することができるだろうか。
あなたは、大好きな彼がどのような姿になっても慈しむことができるだろうか。
大好きなカレピ★とスタバの極彩色ドリンクを飲みほした後のジムでの自撮りという、クソまみれな写真をインスタにUPすることが至上命題のキラキラ女子のみなさん、今一度、己に問いかけてほしい。
果たしてあなたは、眼の前の男がその容姿、金、そして心さえ全て失ったとしても、変わらず愛し続けることができるだろうか。
と。
どうだろうか。
・・・。
まあ、無理だろ? おまえらには。
利用価値のない男なぞ捨てて、またすーぐ金持ってる他の男のそばで上目遣いはじめるだろ?
そんなおまえらは、今すぐそのフィルターで上書きした自撮りムービーを消去し、この『リターン』を刮目して読むべし。
貞子より、伽椰子より、RIKA。
リカ。
リカはかわいらしい名前の看護師さん兼、史上最凶のストーカー。
初登場時のエッジがききまくったキャラがあまりにも鮮烈すぎて、一気にファンになりました。 前作『RIKA』を読んでいない方は、この機会にぜひ手に取って読んでいただきたい。
私は贔屓目なしに見ても、「街中で最も遭遇したくないウーマンランキング」で、リカがあの不動の女王・貞子を軽く超えたと思ってる。
もちろん伽椰子パイセンも片手で難なく押さえて、現在トップをぶっちぎってると思うのです。
※この先は『リターン』および『RIKA』のネタバレをふくむので、お気をつけください
リカの勝因はどこかを考えてみた。
1、生きてる。
リカ、貞子、 伽椰子 。
この強烈な三すくみ全員、「まず話が通じない」というのが三者共通の特徴です。
三者三様に遠慮なくタマ取りに来る彼女たちに対し、「話合って問題を解決する」という大人のコミュニケーション手段を一切取れないことが、恐怖の一つ。
さて、リカのアドバンテージはどこにあるだろうか?
それはまず、リカが生きた人間であるということです。
貞子&伽椰子は死んでる。霊。
貞子は 生前は薄幸だったものの、その生と引き換えに、 サイキック少女だったという前職の経験を活かした超呪い能力プラス「生身で井戸からすごいスピードで這い出る」「テレビの中から出てくる」という超人的な身体能力を身に付けることに成功。
飛ぶ鳥を落とす勢いで映画界に名を遺す程ブイブイ出世を遂げました。
伽椰子はもともと”字がヘッタクソのヤバいストーカー気質”という、リカとの共通点がほのかに垣間見えるものの、それが仇となり夫に殺(や)られる、という悲劇的な死を遂げますが、その代わりに、付きまとった男を見事自分のモノにする(殺す)という恋の成就を成しえています。
リカは、正真正銘生身の人間ながら、何の代償も無く優れた頭脳、強靭な体、卓越した身体能力を持ち合わせ、それらをフル活用して目的を遂行しようとします。
この時点でリカはだいぶアドバンテージが高いと思う。
生身ならお経もお札も通じません。
催涙スプレー、銃、スタンガンなどの、物理攻撃しか通用しないわけです。
それに、貞子&伽椰子は活動目的が「呪い」という、死霊独特の倫理観念で動いているため、基本ネガティブ。
そこへきてリカは、相手の死を望んでいるわけではなく、あくまでも血肉が通った相手の愛をひたすらに求めています。
死人2人に比べると、目的が圧倒的にポジティブ思考。求愛の人なわけです。
リカの大問題なところは、目的を遂行するための”手段をまったくもって選ばない”ところだけれども、今回『リターン』を読んで、うっかりリカが愛らしく思えたりする部分がありました。
”自分のもの”と決めた愛する男を、手足も目鼻口もない状態に加工して、10年間も寄り添うなんて。
いじらしいじゃないか、リカ。
これぞ、ただひたすらに目標を殺(や)りに来る貞子と 伽椰子にはできない芸当、生きているからこその愛・情・表・現
相手の気持ちを考えるなんてことは微塵もなく、 自分が正しいと信じて疑うことをしないから、人の意見なんて聞く耳持たない。
こういうやたらポジティブ思考の女性って、実際にいますよね。
リカはそれを数千倍強烈にした女性だと思うと、絶対に関わりたくないけれども。
2、行動力。
リカのアドバンテージ、2点目はその行動力だと思います。
伽椰子は家にとり憑いてるし、貞子はビデオによる呪いの伝播+井戸を介して出現するけれど、リカは生身だから電車にも乗れるし、車も運転できる。
公共交通機関をフル活用してどこにでも出現するばかりか、警察の捜索から身をくらまして10年間アジトがバレてないし、監視カメラにも映らないという、潜伏能力も極めて高い。忍者・・・?
コレ!と決めた男に対し、毎日毎日絨毯爆撃のようなメールと電話をし続けるのも、根気と情熱が必要。
もしリカがLINEを使ってたら、既読スルーした日にはとんでもないことになるんでしょうね。
ちなみにスタンプはかわいい女子ぽいの選ぶイメージ。
夢の実現のためにはまず行動!という、自己啓発の定番を、リカは究極に実践してるわけです。
3、頭脳。
リカは頭が異常にいいし、度胸も据わってるし、カンも研ぎ澄まされてる。
属に言うデキる女です。
加えて、状況に応じた臨機応変の対応もフレキシブル。これは企業がまっさきに採用したいタイプでしょう。このポイントは、貞子&伽椰子にはどうしたって越えられない壁なわけです。
リカは28歳のナース(自称)なのに、本間さんを生かしたまま「顔面を削ぐ」+「四肢切断する」という高度な外科手術をしました。それもぼっちで。
加減を知らない(というか死んだから忘れた)貞子&伽椰子は、勢い余ってサクッと殺してしまうことでしょう。
本間さんは、つい出来心で出会い系を使ったばかりに、リカに四肢と目鼻口を切断された状態・・・つまり「意識のある肉の塊」状態で、10年生き続けた。さすがに精神は早々に壊れてただろうけど、 この状態で死なさずに面倒を見続けた手腕も、リカのものです。 生き地獄ってのはまさにこのことですね。
リカには死角がない。
明晰な頭脳にポジティブシンキング、抜群の行動力。そこに、異常極まりない自己中心的スタンスと体臭口臭が組み合わさり、ビジュアル面含めあらゆる方面で死角がないモンスターとなったのがリカ。
これほど手がつけられない女性はなかなかいないんじゃないでしょうか。
ウィークポイントは生身だから”不死身じゃない”てくらいだけれども、リカはそれさえ常軌を逸した体の丈夫さで克服しつつある。
『リターン』は、リカVS女刑事という対立のストーリーになっていますが、読んでいるうちに、正義のはずの女刑事よりもリカに肩入れしたくなる瞬間があるんです。
徒党を組んで、恋だの友達だのいってる女刑事より、一匹狼のリカのほうがかっこいいな・・・と思う時がある。
もし狙って書かれているのなら、これは本当に怖いんじゃないかと。
最後まで読むと、『リターン』の意味がじわじわ~と理解できて、
あ”あ”あ”あ”あ”
てなるので、未読の方はぜひ前作の『リカ』から続けて読んでほしいです。
リカかわいいよリカ ハアハア
コメントを残す