十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。
※この記事は以前のブログから改稿して転載してものです。
さてみなさん、この世には、
「これを読んでないなんて、”読書好き”って名乗る資格ないよね?」
という雰囲気を持つ、特別な存在感を放つ本、というものが何冊かあります。
それらはあらゆるレビューサイトでその名を採り上げられ、 レビュー数も3ケタ~4ケタを保持。 もちろんほぼ絶賛。★が多め。
読書好き同士の会話では、
「ああ、アレね。基本だよね」
とか
「コノ展開って、アノ本のアソコのソレに似てるよね」
とか
「お互いに読んでいることが当たり前提のアレコレソレ」で話が進んだりします。
これまでに幾千、幾万という読者に読まれ続け、ついには
「おぬしら、ここを通らなければ読書好きを名乗ることまかりならぬ!」
という
ゴールドセイント並の小宇宙(コスモ)をまとうまでになった本。
ダァ!きしめたァ~♪ こォゥッフ こォウフのコォスゥオォ~♪
実はね。
私、読んでなかった。
有名なのは、知ってた。
基本、根暗なので、 Amazon のレコメンドをひたすらに辿って行くのが好きだからイヤ、好き・・・趣味、と言ってもいい。
音楽配信サービスで「似てる曲」をコツコツ辿っていく、というのも好き。
読んでいる本の傾向がホラーとかミステリー多めなので、高確率で綾辻作品がレコメンドに出現するから、この「館シリーズ」がミステリー界の大ベストセラーなのは知ってた。
レコメンドをスイスイと見るたびに
ーえ、読んでないの?傑作だよ?
ーそれで「本好き」とか言っちゃってるの?
幾千もの声が、姿の見えぬレビュアー達が、こう問いかけてきます。
そのたびに私は
あ~、もちろん知ってるよ。でも私、「共感の声多数!」「全米が泣いた!」系の本は読まないんだよね~・・・
という謎の斜め姿勢で返してきました。
俺はおまえらとは違う。おまえらはメジャー路線だろ?だが俺はマイナー路線だから、趣味趣向がちがうんだ。
さながらパリピに嫉妬してハンカチをぎりりとかみしめる陰キャぶりを発揮し、本屋で手に取るまではいっても読むまでは一度も行ってなかった。
※ 当たり前ですが、誰一人として『十角館の殺人』に「全米が泣いた!」などとコメントしていません。
とうとう、読んだ。
このブログをスタートさせるにあたり、 とうとう、 『十角館の殺人』を、 陰キャのくだらないプライドなどかき捨て、手にとりました。
最初はムウ様だから戦わずして通してくれるはず・・・ という甘っちょろい気持ち大全開でサンクチュアリに乗り込みました。
私、私、
これでパリピデビューできる・・・!
して、サンクチュアリは。
おもしれええええEEEEEEえええeee
なんでこんなに読まず嫌いだったの?
バカなの?
という面白さでした。
特に盛り上がりマックス、ボルテージ最高潮のアソコでは、うっかり漏らすかと思った。
いや、正直ちょっと漏らした。
それくらいおもしろかったです。
もし今これを読んでる「全米が泣いた系は読まないんだよね~」とかほざいてる奴がいたら、横っ面を張り飛ばして推薦図書としてオススメしたい。
貴様はパリピに・・・パリピになりたくないのか・・・!?
パリピとして憧れの ウェイ↑ウェイ↑ をしないまま人生を終えるのか・・・!?
と。
ちなみに私は読了後、微塵もパリピに進化してはおりませんが、前述したとおり、あらゆるレビューサイトで評価されている本なので個人的な感想を書いていきます。
大学のミステリ研の愉快な仲間たち。
リア充のヤングたちが颯爽と登場します。
こいつらがなんと、
「自分たちの事をお互いに著名な推理小説家の名前で呼び合う」
という
根暗にとっては心臓止まりそうなくらいとんでもないルールでウェイ↑ウェイ↑と旅立つシーンから物語が始まっており、 早々に読み進めるのを断念しそうになりました。
アガサ、オルツィ、ヴァン、ルルウ・・・
うん、なんとか読み進めるうちになじんできた。
カー、ポウ。
うん、平気になってきた。
だがエラリイ、お前はダメだ。
エラリイて。
名前もそうだけど、なんかこのエラリイとか呼ばれている男、 いちいち言い回しがキザったらしいのに加え、なんの脈絡もなく突然マジックを披露しはじめ、
アガサという呼び名の女性が「ハートの4」のトランプをひくと、
エラリイ「気が利いてる ニヤ」
※エラリイの呼び名の元ネタとなったエラリー・クイーン『ハートの4』という著作がある
ワアアーーーー はずかしいーーーー
この「エラリイ」だけは「エラリイ(笑)」て思ってましたすみませんすみません。
エラリイ(笑)との和解。
ですがこのエラリイ(笑)が、冒頭、物語の舞台となる島へ渡る途中の船でこんなことを言います。
「ミステリにふさわしいのは、時代遅れと云われようが何だろうがやっぱりね、
名探偵、大邸宅、怪しげな住人達、血みどろの惨劇、不可能半在、
破天荒なトリック・・・絵空事で大いにけっこう。要はその世界で楽しめればいいのさ。
ただし、あくまで知的に、ね。」
これには大賛成。実はエラリイ(笑)気があうかも。
現実的な舞台設定で展開されることの多い最近の推理小説も、もちろん面白いけれど、アガサ・クリスティやエラリー・クイーンのような、ちょっとありえない舞台とカラクリで構築された「ある世界」の中にどっぷり入り込んで、ドキドキしながら名探偵の推理を楽しむ・・・。
『十角館の殺人』は、そんな「本格ミステリ」としてすごく楽しめた作品でした!これを機に館シリーズを読み進めてみようかな。
では、次のゴールドセイントにチャレンジしてきます。
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