【ネタバレ有】 五十嵐貴久『リカ』:キ○ガイ女の極まりストーカー物語。

※この記事は以前のブログから改稿して転載してものです。

妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。単行本未発表の衝撃のエピローグがついた完全版。第2回ホラーサスペンス大賞受賞作。

※文庫版は、単行本未発表のエピローグが加筆された完全版になっています。

文学史上伝説のストーカー女RIKA、始動。

男と別れるとインスタで空の写真と共にヘッタクソな自己陶酔ポエムを投稿し、そして2か月も経つとインスタに

「やっとこれた♪ 話題のカフェでひとやすみ♪」

という投稿に手だけ映りこませて新しい男をにおわせる、石ころみたいにそこらへんに転がってるキラキラインスタ女子のみなさん。

みなさんの大大先輩、リカ様をご存知でしょうか。

知らない?

知らなければ今すぐスマホでの自撮りをやめて本屋かAmazonにGO。

インスタで貴様のチャバネゴキブリのような承認欲求を満たすより、真の愛に生きる女・リカの生きざまをしかと刮目して読むべし。

話の通じない人・代表。

まず。

怖い怖くない以前に、『RIKA』を読んでいてある事に気づきました。

「話の通じない人は、自分のことのみ考えている」

ということです。
当たり前だけれど、そうだったのです。あれ、『RIKA』って自己啓発書だっけ?

たまに、あれ、この人は違う太陽系から来たのかな?
みたいな、到底越えられない距離感で話の通じない人いるじゃないですか。

そういう人は、ただ自分のことだけ考えて、自分のことだけ喋っているだけ。
お互いの歩み寄りとか、相手の発言へ理解を示す気持ちとか、そういう気持ちは一切ない。だから話が通じないんですよね。

女の名前はリカ、男の名前は本間。

ごく普通の看護師とごく普通の社畜の2人は、ごく普通の出来心でごく普通の出会い系サイトを利用し、ごく普通に心と体の隙間を埋めようとしていました。

でもただひとつ違っていたのは、

リカはクイーン オブ ストーカー。

すべてにおいて破格のスペックを誇るストーカー界のスーパーエースだったのです。

奥様は魔女、なつかしいですね。年齢がバレそうです。

出会い系で軽いモテ気分を味わってフンフン ♪ てなってた妻子あるサラリーマン本間が、調子にブッこいたあげく、うっかり「サイコなメンヘラ女」という地球上最悪の生物にひっかかり、とことん、そりゃもうとことん粘着される物語。

( ´_ゝ`) 自業自得だろ・・・。

自分でも何度も何度も後悔してたもんね本間さん。

そんなわけでこの『RIKA』の主人公リカは、究極に話の通じない基地外女として登場します。

リカは医学の知識、行動力、情熱、情報収集力、実行力、会話のイニシアチブのとり方に非常に優れ、そこらの起業女子なんぞ軽く凌駕する才能の持ち主のうえ、容姿から体臭まで軽く人類の規格外

地獄のような醜女で、体臭口臭が卒倒するほどきついけれども、声だけはカワユイ。

この「RIKA」、Amazonのレビューを見ると評価がけっこう分かれていますが、
・前半は「リカ」という女性の異様なまでのストーキングの不気味さ
・後半はパニック映画
みたいな、印象がぜんぜん違うものになっているのが評価の分かれ目なのかな?

人物の背景描写があまりされていないのも、気になる人は気になっちゃうかもしれない。私は「えーー!?」てな感じですごく楽しく読みました。 というかファン。リカの。

なぜ1冊の本でそんなに印象が違うのかというと、
それはひとえにリカが ”一体なんなのか” がわかりにくいからだとと思います。

ここからは文庫本のみ掲載されているエピソードまでネタバレしているので、大丈夫な人は続きを読んでね。

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ネタバレ。

リカがとにかくすごすぎて、

途中からもはや人間なのかさえもわからない

最初、本間とリカがメールと電話でやりとりしていた登場時は、リカが”人間だからこそ” の異様なストーキングの恐怖がすごかった。

その後実際にリカが本間の前に姿を見せるようになってからは、このようなエピソードが登場します。

・リカ、車を猛ダッシュで追いかけてくる
・リカ、監視の目をすりぬけてマンションの玄関まで到達する
・リカ、ゴルフクラブでブン殴られてもピンピンしてる
・リカ、銃で何発か撃たれてもケロリとしてる

リカ、スーパーサイヤ人。

無敵の不死身さを発揮してきたあたりから、「すぐそこにある生々しい恐怖」→「クリーチャー襲来のパニック映画」へとシフトしていった感。

最初「うわ、リカ、怖・・・やべえ・・・」とおののきながら読んでいましたが、そのあたりになってからは、「うわ、リカすげえ!やべえ!」と軽く興奮しつつ、ちょっとリカを応援しはじめてた。

完全に被害者側であったはずの本間が、途中から、なんかウダウダ言い訳しはじめるんですよ。本間のケツの穴の小ささが際立ってくるのもそのあたりなんですす。「オレは悪くない」系の。

そうすると、全面的に本間の応援ができなくなっちゃって、スーパーキ○ガイガール・リカが、「女にダラシない男に鉄槌を加えるような」雰囲気さえでてきた。どっちが主人公かよくわからなくなって、ほんとにおもしろかった。

隣の人が「マトモ」な確証なんてどこにもない。

最後は本間、「ジョニーは戦場へいった」になる。です。

リカが本間を殺さずに外科手術を行ったもよう・・・このマルチタスク女め。リカの才能に嫉妬すら覚える。

哀れ本間は顔も四肢も無くし、見ることも聞くことも食べることも、そして意思表示もできないけれども、しっかりと意識だけはあるという、これ以上絶望的な「生」があるのだろうか、という状況に。

想像するだけに恐ろしいですよね。殺してくれとも伝えられない。

ゲームSIRENの登場人物にもいたな。意識はあるのに体はただの肉塊になっちゃった人思い出した。

四肢切断で胴体のみ(顔は無事)の状況って、似たものではこちらも有名です。

『キャタピラー』は戦争で四肢を失った男の話。 江戸川乱歩の「芋虫」を彷彿とさせる映画です。

『木屋町DARUMA』は、四肢を失った借金取立男の話。エンケンの体を張った演技力がものすごい。

いずれも観ていると気分が悪くなるような映画なのですが、「道から少しはずれた」「少し運が悪かった」だけで、昨日と生き方をガラリと変える必要にかられることって、普通にあると思うんですよね。

これらの映画を思い出しつつ『RIKA』を読了して思ったのは、隣の人が「マトモ」な確証なんてどこにもない、ってことです。そして、「マトモ」の定義も人によってまったく違うということ。

なので、ちょっとした出来心には、お互い気をつけましょう。

私も、アラ、いい男~♪ て容易に近づかないように注意します。

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